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2000/12/22  0711





「なぁ」

「ん?」

「このちびっこ、どうするんだよ」

「君も充分小さい方だと僕は思うが」

「うるせー!」

「どうするって言っても。放っておくわけにも行かないだろう」

「や、お前なら何を理由にされても放置するわけもねーとは思うが。
 そーじゃなくてだな、俺は具体例を挙げろっつってんだよ」

「なら、銀――」

「とりあえず困ったら銀誓館入れておけば良いとか思ってね?」

「……」

「おめーがそう、”良いこと思いついた!”って顔で言う時はいつもそうだ。
 確か、……と大喧嘩したときも」

「喧嘩なんてしていないさ。ただ、あの子が弟に縛られすぎだろうと」

「この雨に晒された奴なら、誰だって大なり小なり地雷ってもんがあるだろ」

「僕が少数派だって言うのかい?」

「や、鈍いだけだ。俺が保障する程度にはな」

「……。なに、この子も主がいないようだから丁度良い。
 どうせこのまま学園に渡してもプールに放されるだけだ」

「まぁ、都合よくお互い懐いてるっぽいしなぁ。
 にしても、使役ゴーストの野良、ねぇ」

「雨脚が強くなってる証拠だろう、きっと」

「ふうん。いつか止んだりしねーのか?」

「ないだろうね、おそらくは」

「じゃあお前、何でこんなことしてんだ?」

「崇高なポリシーからくる、非常に有意義であり
 同時に非合理的でもある矛盾がたまらないからこその趣味さ」

「変人」

「君も大概うるさいね。小さいくせに口だけは達者だ」

「うっせー、ハーゲ!くそジジイ!」

「失敬な!どうしてそう小学生みたいなことばかり言うのかな君は!」

「あまり騒ぐと起きるぜー?」

「くっ……、まぁ、いいさ。
 文句言いつつその変人から声がかかれば来るんだから、僕もそれなりということだ」

「ああ、まだ金返してもらってねーし」

「ええ!い、いつのだい?」

「先月の缶コーヒー。120円」

「セコいね!?」

「あとその時の弁当480円。クリーニング代も何度か立て替えてたっけかな。
 ちなみにここ、家賃俺持ちね。掃除も炊事も全部俺」

「……」

「出張ヒモ」

「僕も随分と奇妙なあだ名がついたものだ……」




































僕は、君が心配でたまらないよ。
いつか君は、『彼』に縛られるあまり他の誰かを犠牲にするんじゃないかと。
何が何でも生きなければと、そう約束したからと……
けれど、結界は少しづつ綻びながらも、人の記憶を容易に書き換える。

君も本当は気づいているんじゃないのか?
彼はきっと、君のことなんてろくに覚えちゃいない。
彼の無事を想う割に、一度も帰っていないんだってね。
見つかってはいけないから、なんてのは建前で
本当は真実を知りたくないからじゃないのかい?
それは、現実を非現実だと思い込もうとする、力ない人々とどこが違うんだい?

死ぬことよりも、誰かを殺し生き永らえることを選んでしまうのは
人間なら誰しも持ちえて当然の思考だ。
そして、それを実行した人間は、その罪の意識に着実に蝕まれていく。
特に君みたいに、どう荒く振舞っても所詮は甘い人間にとって
こうした罪悪感は猛毒も良いところさ。
人を、ただ生きているだけの死人にまで追い込む程にね。

……そうした意地悪を言う力も、僕にはもうないのだけれど。
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